整体師として活動する今のわたしの根っこには、幼い頃からずっと大切にしてきた『信頼』という感覚があります。それは、人と人との関係の中で最も大切なものの一つであり、施術の現場においても欠かせない基盤です。どんなに技術が優れていても、信頼がなければ、人は安心して心と身体を委ねることはできません。
わたし自身がこれまでの人生のなかで、信頼を裏切られた経験も、深く支えられた経験も両方を経てきたからこそ、いま、目の前の人に「誠実でありたい」と思うのです。このページでは、わたしがどのようにして「いま」に至ったのか、その歩みをご紹介します。
① 動物とわたし:安心と信頼の原風景
わたしは大阪市住吉区で生まれ、京都市の竹林に囲まれた山のふもとで育ちました。自然に恵まれた土地で、昆虫や動物、魚など生き物への興味が尽きることはなく、幼い頃から図鑑を集めては夢中になって眺めていました。特に心を惹かれたのは、大きくて静かな存在感をもつ動物たち――キリン、馬、ゾウ、そして “クジラ” です。
また、親戚が営む牧場では、牛や馬に餌をやり、なついてくれた大きな犬たち(土佐犬やグレートピレニーズ)と心を通わせた日々がありました。言葉が通じなくても、体温や仕草で気持ちが伝わる——そんなノンバーバルなやりとりが、わたしにとっての『信頼』の原点になっています。

ある日、落ち込んでいたときに眺めた図鑑のクジラの姿は、わたしの心を不思議なほど静かに、穏やかにしてくれました。流線型のやわらかいフォルム。想像を超える大きさを持ちながら、どこか優しく、雄大で。見るたびに癒され、安心する存在。クジラは、今でもわたしにとって「心を整える象徴」です。
② 人との関わりの中で:信頼の傷と再生
小学校時代、人と関わることは少し苦手でした。仲良くしていた友達に突然無視されたり、理由もわからないまま疎外されたり――そんな経験が、人を信じることの難しさを教えてくれました。

それでも、ある日、自分が陰口を言われていたとき、庇ってくれた友達がいました。自分も標的になるかもしれないのに、勇気を持って寄り添ってくれた。その出来事は今でも鮮明に覚えていて「信頼は壊れることもあるけれど、もう一度築き直せるものでもある」と感じさせてくれました。
③ ラグビーが教えてくれたこと
中学から大学まで、わたしはラグビーに打ち込みました。ときに厳しい練習に心が折れそうになり、怪我で長期離脱したこともありました。復帰できるか不安な中、同級生が励ましてくれたり、先輩が寄り添ってくれたり。仲間の支えがあったからこそ、自分も「人のために在りたい」という想いが強くなりました。

ラグビーは、支え合いのスポーツです。一人ではトライできない。一人のミスも全員でカバーする。わたしの根底にある “施術者として寄り添う姿勢” は、きっとこの頃に育まれたものです。
④ 医療現場から整体へ
大学卒業後は株式会社Kubotaに入社し、実業団ラグビー部に所属しながら官公需営業を担当していました。在職中にはチームが東日本社会人リーグに昇格し、仕事とラグビーの両立の難しさに直面した7年間を過ごしました。
その後、学生時代からの怪我とリハビリ経験をきっかけに、医療従事者を志すようになり、リハビリテーション専門学校の作業療法学科へ入学。卒業後は総合病院のリハビリテーション科で整形外科・脳神経外科の急性期リハに従事しました。

10年目を迎えた頃、西洋医学の枠にとどまらないアプローチに興味を持ち、整体の勉強会に参加。そこで得た徒手療法の技術を現場に取り入れたところ、患者さんの回復力と満足度に明らかな変化を感じました。
⑤ 自分の手で、寄り添う場を
2019年、より近く、深く人と向き合いたいという想いから病院を退職。神奈川県辻堂にて整体サロンを開業しました。ですが、知識や技術、経営の準備不足を痛感し、いったん店舗を閉じ、レンタルサロンでの施術スタイルに切り替えました。この時期に、現在の師匠と出会い「整体とは何か?」を一から学び直し始めました。技術だけでなく、姿勢や在り方、施術者としての深い学びを得る時間でした。

2022年からは東京・旗の台と京都(毎月1回)で完全予約制の整体を本格的に開始。あわせて脳神経内科クリニックにも非常勤で勤務し、神経難病や脳卒中後の方々に対する施術も続けています。
2025年現在、東京で施術の場となるマンション物件を探しながら、日々の施術を一つずつ丁寧に重ねています。
⑥ 犬たちとの日々が教えてくれたもの
ゴールデン・レトリーバーの LOVE、トイプードルの ANNA ――この2匹と過ごした時間は、わたしの人生においてかけがえのないものでした。言葉が通じなくても、気持ちは伝わる。

どんなときも全身で喜びを表現し、最後の瞬間まで尻尾を振って迎えてくれた彼らとの関係には、強い絆と無条件の愛情、深い信頼がありました。
⑦ from FM に込めた想い
こうしたすべての体験が、いまの「整体」というかたちにつながっています。施術は、ただの手技ではありません。安心できる存在であること、信じてもらえる空間であること。それが何よりも大切だと感じています。
屋号にある「FM」には「from Fumuro Masatomo」という意味だけでなく、キャッチコピーとして掲げている
Fine Modulation for Your Senses
from-fm.com
(感覚の細やかな調整)
という想いも込めています。ほんのわずかな感覚のズレに寄り添い、その人本来の心地よさを取り戻していく——そんな施術を目指しています。

そしてもう一つ「クジラ」の存在
流線型の穏やかなフォルム、静けさと雄大さをあわせもつその姿に、幼いころから心を癒されてきました。クジラの鳴き声は、数十キロ離れた仲間にも届くほどの低く深い周波数で響くといわれています。その周波数には、心を包みこむような穏やかさと力強さがあり、人の感覚にも深く作用するものがあります。
海のようにおおらかに、クジラのように静かに、そして調和のとれた音のように。
わたしの施術も誰かの奥深くに静かに届くものでありたい——。
「from FM」には、そんな願いを込めています。
不室 真大(フムロ・マサトモ)